リノベーション事例 住宅ローン

リノベーション相談【ARさん1回目:後編】

今回は前編:ヒアリング編に引き続き、クライアント:ARさんとのリノベーション相談の後編として、我々からのアドバイスの内容についてまとめていきます。

前回では、既に購入を進めようとしている物件、ARさんの要望や不安についてのヒアリングをいたしました。

その中で、私の中で以下の点が気になりました。

1、物件の状況や状態について、専門的な視点での確認をしないまま、物件購入を進めようとしてる。

2、クライアントからの予算削減プランとして、2〜3年かけてのDIYにて完成させようとしている。

次はそれぞれについて、少し詳しく説明します。

物件の状況や状態について、専門的な視点での確認をしないまま、物件購入を進めようとしてる。

ARさんは、既に不動産会社に対して、不動産購入申込書を提出し、翌月の売買契約・翌々月の代金支払い/物件引渡しの予定を組んでおります。

一度はご自身で物件を確認したとはいえ、専門業者による現地視察や調査というのは行なっておりません。

これはつまり、こちらの物件をリノベーションの素材とした場合の現在地が、理想の住まいという目的地までどれくらいの距離が離れているか把握できていないということとなります。

どれくらいの工事内容・工事期間・工事費用が必要なのか、あるいはリノベーション工事をしたとしても理想の住まいが実現しないという可能性がどの程度あるか、よくわからないということとなります。

こちらについてはまさにARさんご自身も不安に感じていたようで、売主の意向もあり不動産業者の進め方の通りに進んでしまったとのことでした。

リノベーション会社との相談が先にあれば、物件ご見学の際に我々も同行することで、もう少し情報を収集した上での判断や、売買契約やお引渡時期に少しでもゆとりを持たせるような調整ができたかもしれません。

クライアントからの予算削減プランとして、2〜3年かけてのDIYにて完成させようとしている

次に気になるのは物件購入から2〜3年かけてDIYによる工事で完成させようとしている点です。

通常、住宅ローンでは物件購入時を基準に、1年以内の工事完成・入居が金融機関の条件となっている場合が多いです。

住宅ローンを利用して、かつ物件取得から1年以内に入居できないとなると(諸般の事情で多少入居が延びる場合は大丈夫な場合が多いですが)、住宅ローンの一括返済を求められる場合も起こり得ます。

(他にも、住宅ローンを利用すると新物件に住所を移す必要があるので、実際に住んではいないとなると、公共サービスを受けたりお子様の学校などで色々と問題は起こり得ます)

ただし、住宅ローンの使途が物件購入のための資金のみで、工事費用については自己資金で行う場合は問題は少ないと思われます。

こちらについては、ARさんはそういった決まりがあるとはご存知なかったようで、事前審査を済ませた金融機関に対しても金額面で借入ができそうかのみで、工期や融資金の受け取り方については確認していないそうでした。

また、このご計画で進めるにあたっては、現在の賃貸住宅の家賃支払いと、これから組む住宅ローンの月々支払いを、実際に移り住めるまでの2〜3年間は並行して支払っていく必要があります。

賃貸に住んでいる間は勤務先から家賃補助が出るなどのメリットはあるかもしれませんが、家計の固定費のうちで最も占める割合の高い家賃を、2〜3年に渡って2重払い期間が発生するというのは負担は大きな負担になり得ます。

状況の整理と対応策

この時点で、クライアントの状況が、我々もクライアントご自身もある程度明確になってきました。

ご計画をこのまま進めるのはなかなかに難しそうだという雰囲気にもなるのですが、難しいばかりも言っておられませんので、私としてはいかに現実化できるかを考えて提案していきます。

状況の整理(再確認)

まずはポジティブな点としては、ARさん自身がこちらの物件を気に入っていること、事前審査を既に済ませていることです。また、可能な限りDIY工事にてコストダウンすることも積極的に考えているという点でございます。

私としては、前編にて触れたARさんの遊び心ある要望(スベリ台や巨大な本棚)も重要ですが、リノベーション=性能向上・改善として、建物構造の強化や断熱性の向上についても必須と考えております。

限りある予算を、どの部分に分配するか、どの工事はARさん自身のDIYで実現していただくかというバランス・優先順位の設定も重要となると考えています。

住宅ローン

次に私の知るところで、物件購入から入居まで最大1年間を住宅ローンの返済を猶予できるという商品を取り扱う金融機関がありますので、そちらの紹介をいたします。

こちらを利用することで、物件購入から1年の間に、物件の調査・プランニング・打ち合わせ・着工〜完成を終えられれば、ARさんにとっては現在の家賃と新物件のローンの2重払い期間をつくらずに済むというメリットがございます。

一般的には物件購入申込の段階でおおよその要望や予算などが固まっている場合が多いのですが、ARさんの場合、物件は決まりつつあるものの、リノベーション工事に必要な物件調査・希望プラン・図面作成・見積作業・工期設定など未着手です。

この場合、着工までに数ヶ月〜半年ほどの時間がかかることも起こり得ます。要望や必要な工事が多く、コストダウンについてもシビアに打ち合わせが必要な場合は特に長期化する傾向がございます。

そのため、家賃とローンの2重払い期間に対してプレッシャーを感じさせずにしっかりと着工前の準備期間を用意できる住宅ローン商品の利用がARさんにとっては安心だと考えました。

※当然ではありますが、紹介した金融機関の住宅ローン金利・諸費用・団体信用生命保険などは他行と比べても遜色のないものでございます。

対応策(まとめ)

これまでのお話で、現段階で把握できる限りの全体像、今後にすべきことが見えてきました。

ARさんのお嬢さんも、退屈な大人の話に飽きの限界を見せてまいりましたので、そろそろお話もまとめの段階です。

ARさんには、上述した金融機関での事前審査と、我々との物件視察の2点を依頼いたしました。

兎にも角にも再来月の物件引渡しの予定は近づいてきますので、決済に向けての手続きは必要となります。

同時に、物件の状況が確認できなくてはいつまでもリノベーション工事の全貌が掴めないままとなりますので、こちらについても急ピッチで進める必要があります。

今回は我々リノベーション会社への相談の前に物件が決まってしまったというケースですが、その状況でも状況を整理し、一つ一つ確認しながらクライアントにとってのリスクを減らし、納得を増やしつつ進めることが重要だと考えております。

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